2015年4月30日木曜日

80:20


 
 

水曜日の午前中はボストン小児病院で、小児膠原病内科の先生の外来を見学させていただきました。

 

小児膠原病内科医は全米でも数が少なく、ボストンより北の地域には一人もいないらしく、遠いところからはるばるやってくる患者さんもいらっしゃるそうです。

 

物理的に遠いことも一つの理由か、受診予約をしていても、キャンセルしたり時間になっても現れない患者さんも結構いらっしゃるとのこと。

 

この日も1人キャンセルでした。次の患者さんを待っている間に、先生が今まで歩んできた経歴に関して興味深いお話をして下さいました。

 

先生は免疫に関する研究を長年されていて、医者の専門を決める際も、「この研究をしたいから」この科を選ばれたそうです。

 

先生は、Residencyが終わった後のFellowship(専門医研修)でも研究をされ、その後のポスドクでも研究をされたとのこと。アメリカではFellowshipで研究をしっかりやるプログラムが結構あるそうで、その理由は、専門医としてその領域の学問を更に発展させることが重要であると認識されているからです。

 

今の先生の仕事は、研究が80%、臨床が20%という割合になっていて、それでも競争が激しい研究の世界で結果を残すには大変とのこと。そういえば、実習で回った他のクリニックでも、80-20の割合で研究されている先生がいらっしゃいました。

 

アメリカで研究する場合は、"Grant"(助成金)を自分で確保しなければならず、そこから研究室を運営する費用、自分の給料、雇った人たちの給料などすべてを払わなければなりません。自分のホームステイ先に一人研究者の方がいらっしゃいますが、その人曰く、ある程度実績を残した人でも、Grantが得られなければ研究することはできないとのこと・・。単に頭のキレだけでなく、絶え間ない競争に耐えうるだけの精神的なタフさが必要であると感じました。

 

アメリカに来て、日本ではあまり聞かない医師の進路について学べたことはとても貴重でした。特に、自分の専門の領域の学問を研究によって発展させていく、よりよくしていくという姿勢は自分も身につけたいと思います。

 

4月の実習(Advanced Study in Neurology@BIDMC)についてと近況報告

はじめまして。れいかです。
早いもので先週の金曜日で4月の実習が終わってしまいました。


4月は、Beth Israel Deaconess Medical Center(BIDMC)Advanced Study in Neurologyの実習をさせていただきました。Bethの神経内科は、Stroke, General,Consultの3チームに分かれています。
わたしは初めの2週間はGeneral、後半2週間はConsultチームで実習させていただきました。

実習していたBIDMC West Campus
 

実習中多くの時間をすごしたTHE FARR MEMORIAL BUILDING (病棟があります。)










 







 

●まずGeneralチームでの実習について。

GeneralチームではStroke以外のすべての神経疾患を扱います。多種多様な疾患について勉強することができ本当にためになりました。

1週間のスケジュールは以下の通りです。

毎日この通りのスケジュールとは限らず、多少時間が前後します。

Morning Round
学生、ジュニアレジデント、シニアレジデントで病棟回診をします。問診、診察を行い、所見を紙に記録します。
Dr Ronthal Patient Presentation
    実際に患者さんを1人お招きし、神経内科全体で行うカンファレンスです。レジデントが患者さんの経過をプレゼンし、おそらくFellow以上の先生が患者さんに実際に問診、身体診察を行いアセスメント、プランについてディスカッションを行います。
  患者さんの症状にあわせてどのように問診、診察をすすめていけばよいのかが分かりとても勉強になりました。ディスカッションを行っているときはどうしても医師中心になりがちで、患者さんの居心地が悪くならないように常に患者さんを中心にすえた進行をすすめることの難しさも話題にあがりました。
・Neuropathology Conference
 病理の標本についての解説の時もあれば、実際にご検体の脳をスライスしながら解説のときもありました。実際の脳を肉眼でみながら症例について考えることができたのは貴重な経験でした。
・Neurology Grand Round
 神経内科に関わる基礎、臨床研究についてのカンファレンスです。普段はお目にかからないようなかなり上の先生方もいらっしゃっていました。
・Neuroradiology Conference
 神経内科全体で行うカンファレンスです。Stroke, Genaral, Consultの3チーム全体で読影の難しかった症例についてディスカッションします。
・Attending Rounds
学生、レジデント、アテンディングで行うチーム内のカンファレンス。学生またはレジデントが症例について簡単にプレゼンし(チーム内の患者さんはみんな把握しているため、Full presentationは必要とされませんでした。)、アセスメント、プランについてディスカッションします。
・Resident Conference
 様々なテーマについてのレクチャーが行われます。レジデントが積極的に発言しディスカッションしていました。
・Epilepsy Conference
てんかんのコントロールが難しい患者さんについて、長時間モニタリングした脳波や患者さんの映像、他の画像検査の結果をもとにてんかんを専門とするフェロー、アテンディングのもとを訪ねてディスカッションします。
・Chairman’s Conference
 学生、レジデント向けに診療科長の先生がレクチャーをしてくださいます。学生が経験した症例についてプレゼンし、その症例をもとに伝導路など基礎的なことから臨床的な側面までレクチャーしてくださりました。基礎的なことを英語でディスカッションするのはかなり難しかったです。
・On Call
 4日に1度、土日も関係なく20時ごろまでレジデントと当直します。体力的に少しきつかったです。ハーバードでは学生が当直する科も多いらしく、22時ごろまで残る時もあるそうです。Callが1つもなかった日も多かったですが、初見で患者さんをみさせていただける機会なので、勉強になりました。

1週間に2人患者さんを受け持ち、Morning Round, Attending Roundでプレゼンをしたり、毎回ではないですがノートを書かせていただきました。チーム内の患者さんが多くレジデントが忙しいときは学生がどの患者さんを担当しているのか忘れていることも多く、事前にプレゼンさせていただけるようお願いする必要があるときもあり、積極的な姿勢を心がけました。チーム内の患者さんに関してはおおまかにでも全員を把握できるようにつとめました。

●次にConsultチームでの実習について。

Consultチームでは神経疾患以外にも様々なバックグラウンドを持った患者さんを多くみました。
重症でICUに入院されているような方も多く、印象に残った症例も多かったです。

1週間のスケジュールは以下の通りです。

Genaralチームと同様に、毎日この通りのスケジュールとは限らず、多少時間が前後します。
カンファレンスの内容などは、Generalチームで述べたものと同じです。
なかなかタイミングが難しく、自分で新しくコンサルされてきた患者さんを問診、診察しAttending Roundでプレゼンする機会をもてなかったのは少し心残りでしたが、昏睡状態の患者さんの身体診察や管理の仕方、神経疾患に限らず様々な疾患について勉強でき、有意義な実習でした。

実習最終日にレジデントTiffanyと
Tiffanyはヨーロッパ出身で、アメリカで臨床をする上では勝手が違うことも多く大変な時もあるそうです。
TiffanyにはComa Examをたくさん教えていただきました。
























 

 

●この他にも、clerkship directorの先生から直々に身体診察の仕方についてレクチャーいただけたり、学生向けのレクチャーが週に1度あったり、AttendingのClinic(外来)の見学をさせていただいたり、Attendingの専門分野についてRoundの後にレクチャーいただけたりと、盛りだくさんの実習でした。


神経内科の実習を回っている学生はわたしを含めて6人で、ハーバードの学生が4人、中国からの留学生が1人でした。
実習最終日にChrisと



わたしは、1ヶ月間同じチームで、ハーバードの学生Chrisと一緒に実習していました。
Chrisはもともと米軍で働いた後、手に職を持ちたくて医師を志したinterestingなキャリアの持ち主で、実習中は建物やシステムについてだけでなく、英語面、知識面でもかなり助けてもらいました。

チーム内の患者さんに関しては使用している薬に関してなど細部まで把握できているだけでなく、自分の担当患者に関してはレジデントと同等のプレゼンをしていて、レベルの高さを感じました。




 




実習最終日にYaoと
中国から留学にきているYaoにも本当に助けられました。

実習初日に自己紹介した後、This is my first day in clerkship here, so I'm so nervous.と言いあってほっとしたのを覚えています。

Yaoとはチームは違ったものの、自分たちの担当患者さんの診察を一緒に協力してしあったり、寮(Vanderbilt Hall)でお話したりご飯を食べたりしていました。

Yaoは将来アメリカでResidencyをすることを本気で考えていて、とても勉強熱心でした。
わたしも見習わなきゃ...








 

●後輩にすすめるか

◎ハーバードの学生が実習していることも多く(多分)、レベルの高い学生たちと切磋琢磨できる。
◎カンファレンスなど学ぶ機会が本当にたくさんある。
◎身体診察に関してはディレクターの先生から直々に教わることができるし、Roundで数多く先生方の診察方を学べるので身につく。
◎神経疾患だけでなく、さまざまな背景をもった患者さんをたくさんみれる。

×4日に1度のon callがあることもあり、体力的に少しきついかも。
×先生方が忙しいことも多いので、どれくらいinvolveできるかは自分の積極性、努力にかかっている。
×特殊な疾患を持った患者さんも多く、専門用語や略語が多いので、英語が少し大変かも。

こんな感じですね...努力は必要だけど、頑張りがいのある実習なのではないかと思います!
後輩のみなさんが科の希望リストを考えるとき、少しでも参考になれば幸いです。
 

●近況報告

今は1週間の休暇を利用して、ニューヨーク、モントリオール、トロントを旅行しています。
わたしはプロセメでトロント大学のLaboratory of Medicine and Pathobiologyで研究をさせていただいたので、その時お世話になったMike教授、指導教官のBettyはじめ研究室のみんなに会えるのがとても楽しみです!!(> <)♥
Brooklyn Bridge(左)&Manhattan Bridge(右)
NYにて。この景色だけでも感動でしたが、歴史背景をしるとさらに感慨深かったです。
 

ブロードウェイでミュージカル MAMMA MIA!をみました!  So awesome!!!
 
5月はMount Auburn HospitalでUrgent Care Ambulatory Medicineの実習をさせていただきます。
FOCUSで学んだ問診、診察、プレゼンの勉強が生かせそうな気がするので、また頑張りたいと思います。

ではでは長くなりましたがSee you later!!


怜花

2015年4月29日水曜日


“Innate Immunity”

 

私が回っていた臨床免疫というコースは、内容が様々で多くの臨床実習と異なる点がいくつかありました。その一つを紹介します。

 

水曜日の夕方は免疫関連の基礎研究のセミナーがありました。

 

「臨床実習なのに基礎研究のセミナー??」

 

と初めは思いました。が、後々、免疫はまだわからないことが多々ある学問なので、最新の研究の知見が臨床においても大切なのかなと思うようになりました。

 

 

ある水曜日の講演者は、アメリカ本土の別の大学の先生ですが、ハーバード大学出身とのことで「母校に帰ってきた」と冒頭に仰っていました。

 

セミナーのテーマはその先生が取り組まれている自然免疫系とオートファジーの関係。

 

約1時間のセミナーの後の感想は・・・「めっちゃ面白い!」

 

丁度近日中に、実習の最終日までに提出するレポートに関して、テーマを決めて実習担当の先生に報告することになっていました。

 

「自己免疫疾患と自然免疫系に関することを調べたい!」

 

先生は、基礎でも臨床でも、免疫に関するテーマであれば何でもよいと仰っていたので、「SLEの病態における自然免疫系の役割」というテーマはどうか先生にお聞きしました。このテーマに加えて他にも2つほど候補を上げ、3つの中から先生の承諾を得てこのテーマについて文献を読みまとめることになりました。

 

「やった!」

 

自分の興味のあるテーマに関する文献検索は好きなので、のめりこみました(笑)

 

以前までは、自然免疫系はただ獲得免疫に信号を送るというような働きをすることしか分かっていませんでしたが、最近いろんなことが発見されています。

 

例えば、Toll-like receptorToll様受容体)。

 

細菌の壁構造(LPS)を感知するTLR-4だけでなく、ウイルスを認識するものも発見されたり、自己免疫疾患においても重要な役割を担っていることが分かってきています。

 

「自然免疫系だと扱う範囲が広すぎるからもう少し絞るように」と言われていたので、SLEの病態におけるTLRの役割について調べることにしました。

 

いくつかレビュー論文を読み、まず現在の知見に関して概要をつかむよう努力~

 

読んでて・・・面白い!

 

1か月前に今自分がこんなことをしてるとは全く想像してませんでした(笑)

 

SLEなどの自己免疫疾患において自然免疫がどのように病態に関わっているのかを知ることで、新しい治療法や予防法の考案に役立たせることができるかも・・・

 

これって、研究を臨床に応用する一つの例?!

 

膠原病内科のフェローの先生も研究をされてたり、既にPhDを取得されてたり、この実習中は、臨床に携わっていても研究をされている方に(というか研究の方が仕事の大半)多く出会いました。

 

「研究マインドを持った医療者」というものがどういうものなのか少し具体的に分かってきた気がします。

 

N

2015年4月27日月曜日

Cardiac Anesthesia Rotation: A summary①

先週をもって、4週間のCardiac anesthesiaが終了しました。


なので、実習内容の報告等を行います。来年以降、HMSに応募し希望診療科15個を提出する人に少しでも参考になればと思います。


大まかな1日のスケジュール
5:30 寮出発
6:15~ MGHオペ室到着、Operation Room (OR)で一緒になる人に挨拶、患者さんに挨拶、自主的に問診や身体診察も可
7:00頃 患者さんOR入室、モニター装着などの手伝い。患者さんの麻酔導入開始
8:00~ オペ開始。

オペが始まるまでの準備は、麻酔科の実習の中で非常に重要で学ぶところが多く、また挿管などの手技も学べる時でもあり、本ローテーションで最も外せない部分でした。
オペが始まり、特に患者さんがバイパスポンプに乗ってしまえば逆にかなり余裕が出てきます。オペに見入るのもよし、食事休憩を取るのもよし。悪く言うとしばらく暇ですが、実習後半になって、この時間こそAttending, Fellow, Residentの先生方に様々な質問をし、また仲良くなるきっかけにもなる大切な時間となりました。
(Attending, Fellow, Residentはそれぞれざっくり日本でいう偉い先生、中堅の先生、後期研修医)

オペ室。レクチャーもあったり


13:00~ 最初のオペ終了、ICUへ見送り。

13:30~ 二件目スタート。再び挿管などのチャンス。
これに入ると帰宅は6時〜8時になります。基本的に2件目も入っていましたが、教科書を読みたいと感じた日やしんどいと感じた日は早めに切り上げることもありました。

木曜日だけは、朝7時からGrand Round というイベント(日本でラウンドというと回診を思い浮かべますが、そうではなくスピーカーをお招きして大部屋でレクチャーをしていただくイベント)があり、オペはその後、件数も一件のみということで、4時には帰れて医科歯科の実習でいうハッピーのような感覚でした。

麻酔科医の麻酔薬中毒についてのGrand Round
Fitzsimons 教授は今まであった人でトップクラスに教え上手な先生でした


実習内容
留学生は私ともう一人、ハーバードの学生はいませんでした。

患者さんとお話しする時間は手術直前しかなく、問診してPatient Note をまとめるなどFOCUSで学んだようなスキルを生かす場面はありませんでした。

以前書いた通り手技に触れる機会は豊富でした。
特に気管内挿管は15回以上行い、毎度詳細なフィードバックを頂き最終週は与えられた3回の機会全てを成功させるまで上達することができました。その他実習後半にIV2回、A-line2回、CV lineは数回scrub inして手伝ったあと1回自らさせてもらいました。手技のみに重点を置いていればもっとできたと思います。

Lectureは週一回ほど突発的に発生し、そこにResidentと一緒に参加していました。質問を投げかけられる形式で、大変勉強になりました。

その他、個人的に経食道エコーTEEに興味を持ち、Resident向けのonline lectureを見させていただいて自習をし、オペ中のTEE評価をそばで聞いて、実際に操作させて頂いたりしました。心臓の解剖学的理解を非常に深めることができました。医科歯科の循環器の実習でさっぱりわからなかったエコー機械の操作方法や、パルスドップラーの概念などもざっくりと理解することができました。

心臓外科麻酔で用いられる麻酔薬は限られており、一般外科麻酔ほど多彩な薬の使用を学ぶには至りませんでした。一方術中の血圧コントロールなどの血行動態は勉強になりました。

週一回、Course DirectorのHeidi先生(Attending)と実習内容について小1時間みっちり話す時間がありました。とっても姉貴肌な先生で、よかったこと・うまくいかなかったこと・わからなかったこと・来週したいこと、何でも聞いてくださりしっかり面倒を見ていただいているという安心感がありました。一般外科麻酔の見学、カテ室の見学などの要望にも対応してくださいました。

最終日には、自分の選んだテーマで20分ほどのプレゼンをHeidiに行いました。自分は、TAVRという新しい医療について発表しました。英語で発表する貴重な機会、言葉は練習した甲斐があってうまくでてきましたが、スライドについていくつかコメントを頂きました。論文のデータをそのままスクリーンショットで貼ってしまったスライドに
"No one is gonna read that slide. It is a COMPLETE WASTE of a slide."
プレゼンのレベルが高いと言われるアメリカでの、プレゼンへのこだわりの強さを実感することができました。

Heidiとお別れの写真



後輩に勧めるか
麻酔科に興味があるなら大いに取るべき。心臓に興味があれば、取る価値あり。手技にこだわるならGeneral Anesthesiaの方が機会が多そうだった。
FOCUSで学んだスキルを生かせなかったのは残念だった。
非常に専門性が高い領域で、内容は難しめ。自分からProactiveに学ばないとすぐ消化不良になる。
症例が非常に豊富。自分は医科歯科の心臓外科でCABGや弁置換は見ていたので、先天性心疾患を好んで見た。(Tetralogy of Fallotなど)
拘束時間は上に見ての通り長い。先生方は疲れたら帰ってもOKとおっしゃったが、こちらははるばる来ているので最後まで居たいものだ。
時間のコスパは悪い。医科歯科の心臓外科でも手術を見る機会があると思うが、それを毎日、しかも1日2回。

先生方と話す時間に非常に恵まれており、アットホームで居心地がよかった。過去の報告書を見ると、ここまでAttendingと距離を縮めることができる診療科は珍しいのかもしれない。

その他
Heidiには、挨拶の大切さを教わった。それは、自分が教わる医者にだけでなく、看護師さんや技師さん、全員へだ。最初は心細くて、相手が興味なさそうな時もあってしんどい思いをしていたが、だんだんと名前を覚えてもらったことで2週目あたりからたくさん手伝いを頼んでもらえるようになり、Get involvedするきっかけとなった。
患者さんにも必ず、毎朝「Hi my name is Tom, I'm a Medical Student today, and I will be observing and taking care of you」と自己紹介した。
こっちの人はマスクも嫌う。街中はもちろん、病院内でもORを出るとすぐマスクを外した。これも、病院内で皆んなとコミュニケーションをとる上で重要なことだと感じた。


また、心臓外科麻酔は日本人の先生が多かった。教授一人、Attending一人、Fellow一人。心臓外科にもFellowの先生が一人いた。皆さん非常に親身にして下さって、特にFellowの長坂先生にはこれ以上ないほどのメンターになっていただいた。

②に続く
トム

2015年4月23日木曜日

Boston Marathon


こんにちは、りょんです。ボストンに来てそろそろひと月が経とうとしています。
 
予想外だったことの一つには間違いなく、お天気の気まぐれさが挙がります。宗谷岬(北緯45度)より少し南の北緯42度、寒さは覚悟してきましたが盲点でしが。
先週春めいて皆が一斉にTシャツ短パンで闊歩していたボストンですが、週末は一転して氷雨の降る冬の日になりました。ボストン7年目の先生いわくYou shouldn't care the weather here, it does whatever it likes, so you do what you want.  お天気なんか気にしてちゃダメよ、だそうです笑
 
そんなボストンなので今週月曜日、気温4℃をものともせずにBoston Marathonが開催されました!
もともとは独立戦争に関したMassachusetts州の休日で、今年で119回目の開催となるフルマラソンに町中がわくわくしていました。
Museum of ScienceのTrexもアピールしていました
 
町中で見かけた黄色と青のマークがこちら。2013年の爆発事件から2回目の開催となる今年も”Boston Strong"がいたるところに掲げられていました。


 
 
これが窓際にずらっとならんでいたり。
 
 
マラソンコースが近いためLongwood Medical Area内の病院もお休みになります。(なので爆発事件の時は東に離れたMassachusetts General Hospitalに一番多く負傷者が搬送されたのだとか)
お休みがいただけたメンバーで、寮から近い40km地点に応援に行きました。



セキュリティを越えて沿道へ。
ボストンマラソンは車いす男子、車いす女子、男子、女子の4部あり、Boston Qualifyingと呼ばれる基準タイムを過去一年に超えた選手だけが原則エントリーできます。ゼッケンの順番、スタート群の順番も提出した記録順に決められるので、同じペースの人と混雑せずに走れるのがいいそうです。
 
少し早目に行ったので、車いすから応援できました。
車いすマラソンと聞くとこの形↓を思い浮かべる方が多いと思うのですが、
走ってくる人をよく見ていると、
手漕ぎ!!
他にもいろいろあるようです。鍛え方だけでなく、マシン選びも鍵でしょうか。

軍服の人も走っていたり。かなりしんどそうな顔をしていたので、訓練なのでしょうか。
トップ集団でも後続でも、選手が来るたびに大盛り上がりでした。

正午ごろに、女子の先頭、つづいて男子の先頭がやってきました。
男子の先頭。最後まで逃げきって、一位でした!
遠くに歓声が聞こえ始めてから駆け抜けるまでが一瞬で、応援の大歓声と熱気で寒さを忘れるような興奮に包まれていました。初めてマラソンの応援に行ったのですが、自分の前をトップ選手が駆け抜けるのは一瞬でもそれを待つ間、後続の人への応援、いろいろな楽しみ方がありました:)



ボストンの病院の多さを反映したような特徴もありました。
まず、車いすの部で、家族や友人の車椅子を押して走っている方がいらしたこと。Team Hoytをご存知でしょうか?
私は中学の英語の教科書で知りました。
脳性麻痺のある息子Rickの車いすを父親のDickが押して、有名無名問わず数々のマラソンを完走してきた2人です。そんなTeam HoytですがDickが高齢になり、マラソンを続けるのは難しいといわれていました。しかし、彼らの初めての挑戦だったボストンマラソンは続けたいという思いから今年はDickに代わってチームメンバーがRickを押し、今年も無事に走りきったそうです。防寒雨除けで顔が見えなかったので本当に彼らだったのか少し不安ですが、おそらく彼らが走ってきたとき、応援の歓声がひときわ大きかったように思います。
 
また、ボランティアに4500人以上の応募があり、Massachusetts General Hospitalから40名が医療ボランティアランナーとして、また小児癌の支援のためにユニフォームに患者さんの名前を書いて一緒に走るチームも参加したそうです。赤十字とアメリカ心臓病学会が協力して、心停止患者蘇生方法のHands only CPRのやり方を動画で配信するなど、応援は市内にとどまらず広がっていたとか。
 
 
これら一つ一つから、このマラソンを盛り上げ、これからも良い思い出を積み重ねていこうという意思が感じられました。伝統のイベントである以上に、自分たちがよりよくしていくものという強い思い入れがあるのではないでしょうか。
実習中にも通じる事ですが、アメリカでの沈黙や不変は、同意であり満足です。不満があるならアピールしたり変えたり好きにしていいけれど、その代わり気を回してくれる事もほとんどありません。手の中にあるものをよりよくする権利も責任も、持ち主にあります。
今回はボストンの人々の、自分たちのマラソンは2013年のテロを越えていかなければいけないという強烈な意志が印象的でした。





ここから先はマラソン関係ないですが、うれしかったので書きます。
日本から救援物資が来ました!郵便局からEMSで3日、綺麗な状態で届いていました。よかった!
日本食にこだわりがあるわけではないのですが、先日、日本のクッキーとこちらのスーパーで買ったクッキーを味だけで判断できて、自分でも驚きました笑 日本のお菓子最高です!

2015年4月21日火曜日

The spring has come!

はじめまして、いがです。
4月はPediatric nephrology@MGH をまわっています。

3月下旬にBostonに降り立った頃は、東京と比べると気温が10℃くらい低く、ライトダウンでしのごうとしていた自分にはやや厳しいものがありましたが、最近になって暖かくなってきました。
HMSでの実習が直前まで確定しなかったので、心の準備もままならぬまま現地に来て実習が始まりました。(自分の場合はそもそも行けるなんて思っていなかったので(笑))


さて、今回は自分が実習しているPediatric nephrology@MGHを紹介します。
MGHのPediatric nephrologyは規模がこじんまり(Chief 1人、Consultant 1人、Attending 3人)としていて、皆で一緒に外来・病棟・コンサルテーションを請け負う感じです。私は当初、外来と病棟をそれぞれ2週間ずつまわる予定でしたが、病棟の患者さんが今のところ1人しかいないので、外来・病棟・コンサル・オンコールと混ぜこぜでやっています。

外来(スペースはゆったりしていて、ご家族の方も同伴しやすいです)
基本的な1日の流れ
8-9時    morning conference
9-12時    朝回診・外来
12-13時  noon conference
13-17時  外来・コンサル

外来では、患者さんの承諾を得たうえで診察に同席します。新患の方が来たときなどは、都合が良ければ、問診・身体診察を実際にさせていただき、Attendingにcomplete presentation(focused presentationのように症状に関連する事項だけではなく、家族歴や生活歴など患者さんの背景も含めて)をします。自ら診察することで学ぶものは多いのですが、言語の壁がどうしてもあるので大変なことも多々あります。たとえば、患者さんの言っていることがうまく理解できなかったり、逆に自分の言葉が正しく伝わっているのか不安になったり・・・。四苦八苦しながらも何とか診察を終え、自分なりにアセスメント&プランに必要な情報を割と拾い上げたつもりでも、いざAttendingと話し合ってみると、まだまだ足りないことだらけだと自省する日々です。よく、病気ではなく患者さんを診なさいと言われますが、並大抵の努力でできるものではない気がします。
ちなみに、記念すべき私の最初の患者さんはWilliams syndromeをもった人でしたが、Williams syndromeについて知らなかった私は終始疑問に包まれながらも、知らないことをさとられないように診察をしなければならず、大変でした(笑) 後から知ったことですが、Williams syndromeの人たちは総じて人懐っこいという特徴があるようで、私の患者さんもとってもfriendlyで常にニコニコしていて癒されました。

一方、病棟では毎日回診を行って、患者さんの様子を把握したり、ご家族とお話をしたり、RNや他科のDrと情報交換をして患者さんの治療方針を決めます。コンサルがあれば、患者さんのもとへ赴いて話を聞き、カルテから入院経過を把握し、主科のチームに依頼内容の詳細を尋ねます。コンサルでは、短い依頼内容しか手元に情報が無い状態で、いちから患者さんに何が起きているのか紐解いていくので、探偵になったような気分になります。もちろん、腎臓内科に関することだけではなくて幅広い内科知識がないとお話にならないので、もっと勉強に精進しないと、と思います。


4月の実習も残すところ1週間となりましたが、この貴重な海外実習の機会をいただけたことに心から感謝して、最後まで気を抜かずに実習で沢山吸収したいと思います。

2015年4月20日月曜日

あっという間に3週間


私の最初の4週間は「臨床免疫」というコースである。

 

「臨床免疫・・・?」日本ではあまり聞き覚えのない科である。シラバスを読むと、膠原病内科、アレルギー科、皮膚科など、免疫の異常をきたす疾患に関わる科を回るとのこと。

 

3月末。日本はようやく暖かくなってきたころ。3月の実習が終わり、いよいよ渡米。

 

13時間の直行便でボストンに到着。

 

寒い!・・・冬の再到来である。


ボストンに到着した日、臨床免疫の担当の職員の方から「月曜日、Arthritis ClinicXX時に来てください」とメールが届いた。アメリカの病院での臨床実習がいよいよ近づいてきたという実感が湧いてきた。

 

月曜日。

 

朝目が覚め、朝食を食べ、今日はどんな日になるのか期待と不安が混じる・・・いや、緊張感で、期待や不安を感じる余裕がなかった。以前読んだ本で「人は変化を嫌う。」と書いてあった。新しい科で新しく実習を始める時、いつもそのフレーズが頭に浮かぶ。

 

しかし、同時に「変化は人を成長させる」というフレーズも思い浮かぶ。

 

病院に到着。回転式のドアを通り抜け、院内に入る。今まで回った日本の病院とはどこか雰囲気が違う。建物の作りもそうだが、様々な人種の人がいることが、というよりもアジア系の人が少数派であることが雰囲気の違いの一番の原因のようだ。

 

受付の方にArthritis Clinicの場所を尋ねた。その人が言っていることは80%程度理解でき、少し歩いてはまたClinicの場所を尋ねた。

 

ようやくArthritis Clinicに到着。先生はまだいらしていないということで、椅子に座って待つ。近くを歩いている人が自分を見ているような気がする。

 

先生が来られた。初日についた先生はこの「臨床免疫」の実習の責任者であった。この先生は全身性エリテマトーデス(SLE)の診療・研究をされていると渡米前に予習していた。

 

このクリニックは「関節炎」に特化した外来クリニックで、学生は先生の外来診療の様子を見学することになっている。

 

外来の部屋は、一つの個室といった感じで、広すぎず、狭すぎず、医師と患者、付き添いの人が3人くらいが入ると丁度いい広さだった。部屋の壁には、SLE関連の国際学会のポスターが貼ってあり、中には京都で行われたものが貼ってあった。ポスターには伝統的な木造の家が雪で覆われている様子が写っていた。日本と違う雰囲気の中で日本の写真を見ると心がホッとする。慣れ親しんだものは、ぴんと張った緊張の糸をほぐしてくれる。

 

患者さんが入ってきた。自分は医学生だと名乗り、見学の許可をいただいた。「調子はどう?」という先生の言葉から問診が始まった。

 

問診の後、診察台に患者さんが座り、身体診察が始まった。

 

その後、問診・身体診察に基づく評価とこれからのプランについての話が始まった。

 

その後、先生は患者に対して質問はないか尋ねられた。

 

"Any questions?" "No."

 

最後に、視線を合わせ、がっちり握手。

 

この握手はとても印象的だった。アメリカでは、初対面の人に会ったとき、まず握手をして自己紹介をする光景をよく見かける。非言語的(non-verbal)なコミュニケーションの一つである。

  

外来診療の流れは日本と変わらないと思う。しかし、時間の流れが比較的穏やかな感じがした。


初日が終わり、普段の自分は、あれもこれもやらなきゃと気づかないうちに焦りがちになる、ということに気づいた。よく耳にする言葉に「忙しいという漢字は「心が亡(な)い」と書く」というものがあるが、その通りであると思った。新しい環境の中で、自分の普段の心の持ち方について気づけたことは有意義であった。

 

ボストンに来てから早3週間が過ぎた。日々の出来事に慣れてくる頃。初心を忘れず、一日一日を充実させていきたい。

 

N