私の最初の4週間は「臨床免疫」というコースである。
「臨床免疫・・・?」日本ではあまり聞き覚えのない科である。シラバスを読むと、膠原病内科、アレルギー科、皮膚科など、免疫の異常をきたす疾患に関わる科を回るとのこと。
3月末。日本はようやく暖かくなってきたころ。3月の実習が終わり、いよいよ渡米。
13時間の直行便でボストンに到着。
寒い!・・・冬の再到来である。
ボストンに到着した日、臨床免疫の担当の職員の方から「月曜日、Arthritis ClinicにXX時に来てください」とメールが届いた。アメリカの病院での臨床実習がいよいよ近づいてきたという実感が湧いてきた。
月曜日。
朝目が覚め、朝食を食べ、今日はどんな日になるのか期待と不安が混じる・・・いや、緊張感で、期待や不安を感じる余裕がなかった。以前読んだ本で「人は変化を嫌う。」と書いてあった。新しい科で新しく実習を始める時、いつもそのフレーズが頭に浮かぶ。
しかし、同時に「変化は人を成長させる」というフレーズも思い浮かぶ。
病院に到着。回転式のドアを通り抜け、院内に入る。今まで回った日本の病院とはどこか雰囲気が違う。建物の作りもそうだが、様々な人種の人がいることが、というよりもアジア系の人が少数派であることが雰囲気の違いの一番の原因のようだ。
受付の方にArthritis
Clinicの場所を尋ねた。その人が言っていることは80%程度理解でき、少し歩いてはまたClinicの場所を尋ねた。
ようやくArthritis
Clinicに到着。先生はまだいらしていないということで、椅子に座って待つ。近くを歩いている人が自分を見ているような気がする。
先生が来られた。初日についた先生はこの「臨床免疫」の実習の責任者であった。この先生は全身性エリテマトーデス(SLE)の診療・研究をされていると渡米前に予習していた。
このクリニックは「関節炎」に特化した外来クリニックで、学生は先生の外来診療の様子を見学することになっている。
外来の部屋は、一つの個室といった感じで、広すぎず、狭すぎず、医師と患者、付き添いの人が3人くらいが入ると丁度いい広さだった。部屋の壁には、SLE関連の国際学会のポスターが貼ってあり、中には京都で行われたものが貼ってあった。ポスターには伝統的な木造の家が雪で覆われている様子が写っていた。日本と違う雰囲気の中で日本の写真を見ると心がホッとする。慣れ親しんだものは、ぴんと張った緊張の糸をほぐしてくれる。
患者さんが入ってきた。自分は医学生だと名乗り、見学の許可をいただいた。「調子はどう?」という先生の言葉から問診が始まった。
問診の後、診察台に患者さんが座り、身体診察が始まった。
その後、問診・身体診察に基づく評価とこれからのプランについての話が始まった。
その後、先生は患者に対して質問はないか尋ねられた。
"Any
questions?" "No."
最後に、視線を合わせ、がっちり握手。
この握手はとても印象的だった。アメリカでは、初対面の人に会ったとき、まず握手をして自己紹介をする光景をよく見かける。非言語的(non-verbal)なコミュニケーションの一つである。
外来診療の流れは日本と変わらないと思う。しかし、時間の流れが比較的穏やかな感じがした。
初日が終わり、普段の自分は、あれもこれもやらなきゃと気づかないうちに焦りがちになる、ということに気づいた。よく耳にする言葉に「忙しいという漢字は「心が亡(な)い」と書く」というものがあるが、その通りであると思った。新しい環境の中で、自分の普段の心の持ち方について気づけたことは有意義であった。
ボストンに来てから早3週間が過ぎた。日々の出来事に慣れてくる頃。初心を忘れず、一日一日を充実させていきたい。
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